コラム

no.012 <考察>人材開発の傾向と課題
なぜ育成体系を見直す企業が増えているか?

2015年03月27日 | マーケティング推進部 ゼネラルマネジャー 菅桂次郎

2014年度(2014年4月-2015年3月期)もいよいよゴールが見えてきました。アベノミクス効果や東京オリンピック効果などの好影響が各社にも見え始め、人材投資への積極的な施策を打ち始めている企業が増えているという実感を得ています。

そこで今期最後のメルマガでは、我々の日々の活動の中で、相談を受ける頻度の高い3つのテーマ(育成体系の見直し、組織の活性化、人選ニーズの高まり)を取り上げ、そこから感じられる傾向や課題について考察してみたいと思います。

(1)育成体系の見直し

従来の育成体系の見直しを図る企業が増えています。体系構築から各種施策への落とし込みまでの相談・コンサルティングを行う総合的なご支援として、弊社の提案機会が増加している背景には何があるのでしょうか。当然そこには各社各様の問題意識や課題が存在しますが、共通して言える要素として以下の3点が挙げられます。

Point-1変化を主導するリーダーの育成
「リーダー育成」がキーワードになります。3年目社員、5年目社員、新任主任・課長などといった職務上の役割遂行をベースに置いた育成から、「リーダーに求められる要素(能力・行動特性)」に焦点を当てた取り組みへと変化しています。
変化が常態化している昨今のビジネス環境では、固定的な役割の堅実な遂行ではなく、変化に適応していくための自分起点の周囲への影響力の強化が重要視されており、画一的な役職に囚われないリーダーシップの発揮が、あらゆる階層で求められている結果であると思われます。
「変化を察知する」「変化に飛び込む」「変化に慣れる」「変化を主導する」ことができる社員の育成。当然のことながら、そのためには「変化に適応していく力」が必要となり、換言すれば、「新しいことを学び続ける力」がより強く問われています。
Point-2複雑化するマネジメント環境への適応
「逆転現象」と「ダイバーシティ」がキーワードになります。多くの企業から、元上司、元先輩をマネジメントしなければならなくなった若手マネジャーの育成についての相談を受けることが多くなっていることからも、「年上の社員を部下に持つ若手マネジャー」が直面している現場での苦悩が垣間見られます。
また、「女性活用(個人的には表現に違和感を持っていますが)」という言葉に代表される男性も含めた社員の多様な働き方を受け入れるための環境整備にくわえ、グローバル化の進展も合わさって、現場の第一線を授かるマネジャーのマネジメント環境は益々複雑化しており、育成施策をはじめとする人事制度を如何に適応させていくかが各社人事に問われています。
Point-3研修成果の再定義
自立的成長を目的とした「内省の場」「相互啓発の場」の提供がキーワー ドになります。これは、我々教育ベンダーの立場から言えば、「教えられること」が限りなく減少しているともとれます。テクノロジーの進展により、「情報(知識)」の取得に対するハードルは過去に比して格段に下がっており、研修の位置づけは、「知識習得の場」から「自己成長に向けた課題認識の場」へと変化しており、研修という日常から離れた空間の中で、如何に気づきを与えるかが問われています。

このように、ビジネス全体に影響する変化の大きさを鑑みると、人事全般および育成に関わる領域においても変化が求められるのは必然であり、「人事部門こそが率先して変革を志向していく」という意図を持った取り組みが増えているように感じられます。

(2)組織の活性化

組織診断・調査の提案依頼を受けるケースが増えています。社長交代による新たな方針展開にあたっての現状把握が目的であったり、各種制度改定にあたっての現行システムに対する満足度調査であったりと様々ですが、弊社への相談として多いのは、ES向上、モチベーション向上といった組織・個人のソフト面に対する問題意識をお持ちの企業です。

その際に出てくるキーワードは、「活力(イキイキ)」「主体性」「チャレンジ」であり、全社ビジョンや方針に向かっていくための社員の意欲喚起を重要課題として捉えている企業が多くなってきています。換言すれば、組織全体に停滞感・疲弊感が溢れている、もしくはそのように捉えている企業・人事が増加していると言えます。そのため、従来は、経営企画や人事制度担当主幹であった取り組みでしたが、育成担当や現場と連動しながら施策を推進する動きへと変化しているように感じられます。

「戦略は組織に従う」という言葉がありますが、戦略実現に向けて活動するのは一人ひとりの社員であり、社員力を高めることで差別化向上を志向する企業が増えているということです。従来の規模をベースにした戦い方から、社員個々の意欲・知性・機動性を如何に引き出し、高めるか。そのためのボトルネック把握と、経営から現場を巻き込んだ風土改革を展開していく動きが増えています。

(3)人選ニーズの高まり

企業におけるこれまでの「人選のアウトソース・ニーズ」は、(1)採用、(2)管理職(課長)登用前が主流であり、その傾向に大きな変動はありませんが、相談を受ける内容の「質の変化」を実感しています。

特に弊社では、「(2)管理職登用前」で弊社のアセスメントプログラムを導入いただく企業が多いのですが、「試験」の要素は残しつつも「啓発」の要素を多く盛り込んだ施策へと変化してきています。

通常、2~3日間のプログラムで運用させていただきますが、その前後での取り組みとして、上長や経営陣を巻き込んだ設計が増えています。昇進や昇格は、期待役割が劇的に変化するタイミングであり、その「転機」における動機づけの良し悪しは、その後の育成(自己啓発)に大きな影響を及ぼします。そういった意味でも、「評価機会」を育成のチャンスとして捉え、「有益な刺激を与える」という意図を持って運用することで、より高い費用対効果を目指しています。

具体的には、コース冒頭のオリエンテーション場面において、社長もしくは役員自らが自社の方向性とミドルへの期待を伝える場をもったり、コース終了後に上長への個別面談をセットで運用することで、現場での育成の取り組みに一貫性をもたせたりするなど、導入いただいた企業の課題に合わせた様々なバリエーションを設計・提案・運用させていただいています。

今後も、人材投資先を如何に見極めるかという観点からも、人選ニーズの高まりは必然であると思われますが、単なる人選(評価)に留まらず、ビジョン浸透や育成連動といった様々な施策との繋がりが重要なテーマになってくるものと思われます。