コラム

no.022
「変化の質」を高めるための4つの取り組み

2015年11月27日 | 取締役 菅桂次郎

分かっているのに変えられない、変わりたいのに変われない。そして何より、自分自身が自己変革を阻害する主体となっているのではないか。こんな問題意識をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

コラム<no.021『本当にこれで変われるんですかね・・・』>でも紹介させていただいた「変化の質」に着目した際、私たちにできることはなんだろうか。そんな疑問・問題意識から、弊社で挑んでいる『自己を規定する囚われの克服』に対する4つの取り組みを紹介したいと思います。

まず、私たちが焦点をあてたのは、「自分自身の行動を阻害するメカニズム」です。書籍、『なぜ人と組織は変われないのか(ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー著)』の言葉を引用すると、「変革への道は、変革を妨げているのが自分自身の内面のシステムなのだと十分に理解してはじめて開けてくる」とあり、我々の過去の経験値からも、この点こそに自己変革のポイントが隠されていると考えています。

変革者としての我々の行動が成功するか否かは、何をするか、どのようにするかではなく、どのような内面の場から行動するかにかかっている、ということです。

あるべき姿に向けて新たなスキルや能力を磨くという『何を、どのように』取り組むのかが、「車のアクセルを踏む行為」だとすれば、分かっているけど変われない(変わりたくない)という内面のシステムという『内面の場』がブレーキであり、私たちは、必死でアクセルを踏みながら、同時に必死でブレーキを踏んでいる状態であるとも言えます。

このメカニズムを理解しなければ、本質的な部分が変わらないため、いくらスキルを磨いても、新しい知識を得ても、いつも通りの行動をとってしまうという無力感に陥ってしまうのです。このメカニズムの詳細は、本家の上記書籍に譲るとして、このブレーキに該当する「自分自身の行動を阻害するメカニズム」を取り払うための我が社のチャレンジを紹介します。

4つの取り組み

  • [1]内面のメカニズムを形成する諸要素を理解する
  • [2]客観的なフィードバック(どのように見えているのか?)
  • [3]深い内省(何が自分をそうさせているのか?)
  • [4]無意識の意識化(日々、無意識化にあるものを顕在化させる)
1内面のメカニズムを形成する諸要素を理解する
全社員を対象に、まずはメカニズムそのものの存在を理解し、それを形成する諸要素に照らし合わせて、自分自身のメカニズム(免疫マップ:書籍『なぜ人と組織は変われないのか』より)を解明することに着手しました。
当然、考察の深さに個人差はあったものの、自分自身の行動を阻害していた要因(裏の目標や固定観念・囚われ)に気づき、飛躍的な変化(内面)を実感した社員も数名でました。
免疫マップ
ここで得られた大切な気づきは、あるべき状態(表の目標)に対して、それを阻害しようとする真逆の行為(裏の目標)が誰にも存在し、その深層には、これまでの人生で蓄積してきた囚われや固定観念が強く影響を与えていることを認識することにありました。
まずは、この自分自身の『内面の場』の存在を受け入れ、受け止めることが全てのスタートになると思います。
2客観的なフィードバック(どのように見えているのか?)
しかし悲しいことに、自分自身の内面にあるメカニズムに自ら気づくことはかなりの困難を伴いました。なぜなら、『それは当たり前すぎて見えないもの』であるからです。
泳いでいる魚が水の存在に気づかないように、我々人間が日常の中で空気の存在に気づかないように、自分自身の感情や行動のパターンは、『見えすぎていて逆に見えないもの』であることに気づきました。
一方で、他者からは、非常によく見えるものであるという気づきも同時に得られました。
そのため、内面のメカニズムに自らが気づくための支援として、他者からのフィードバックを実施しました。具体的には、360度診断とアセスメントプログラム(第三者による客観的評価)の導入です。『他者からは見えすぎていて、自分には見えていないもの』を起点として、内面のメカニズムの解明へとつなげていきました。
ここで得た大切な気づきは、日々のフィードバックの重要性です。ツールや第三者を効果的に活用しつつも、日々を共にする親しいメンバー同士の『誠実なフィードバック』と、その前提となる信頼関係が何よりも重要であると実感しました。
3深い内省(何が自分をそうさせているのか?)
他者からのフィードバックを一つの起点としつつも、最終的には自分自身による深い考察(内省)が重要になります。自分が何者であり、これから何を成し遂げたいと思っていたのか。自分は何を大切に生きてきて、これからどのように生きていきたいとのか。
ただし、多くの人は日々の業務に忙殺され、上記のような根源的な問いを自らに投げかけることに意識が向かいません。
そのため、“強引”に内省するきっかけを作ることが最初は重要であるという結論に至り、読書感想文という方法を選択しました。
生き方や働き方に関する書籍や、リーダーシップやチームで働くことの意義などが描写された書籍を課題図書とし、自分自身の中にある考え方を“強引”に引き出すことを繰り返し行いました。
特に、経営者の修羅場体験や思想が書かれた書籍については、内容の好き嫌いは分かれるにせよ、自分のあり方を問い直す良質な刺激になったものと思われます。
とは言え、私自身、全ての書籍が深い内省につながった訳ではありませんが、いくつかの書籍は、自分自身の奥にあった父親への思いや、これからの生き方につながる根源的な部分の新たな気づきが得られたと実感しています。
さらに、ここで得た大切な気づきは、他者の内面を知るきっかけになったことです。我が社のこの取り組みでは、感想文の共有も同時に実施しました。その結果、日常の中ではお互いに気づき合えなかった内面の共有が促進され、お互いが知り合ううえで重要な役割を果たしたと言えます。
4無意識の意識化(日々、無意識化にあるものを顕在化させる)
そして最後の4つ目の取り組みが、『気づきの実践』です。上記1~3の一連の取り組みにより、自分を変えていきたいという共通認識が社内に共有されていたこともあり、この手の取り組みでよくある、ある種の気恥ずかしさという心理的な抵抗感は軽減されていました。チームでのミーティングや各プロジェクトにおける会合で、以前に比べて自身の内面を共有する機会は増えてきたと実感しています。
特に、私を含めたチームや組織を預かる立場にある人間は、どうしても目標や方針といったコンテントに意識が向かう反面、メンバーの気持ちなどの内面には意識が向かいづらい傾向があります。
そして何より、自分自身の内面(気持ち)を率直に伝える行為そのものが圧倒的に少ないというのが現状です。新たに得た知見やスキルを実践するという『何を、どのように』という取り組みではなく、自分がいま感じていることを率直に伝えるという『内面の開示』に一歩踏み出したことで、驚くほどメンバーからの意見が上がってくるようになりました。
先日も、若手のチームリーダーを対象に、方針浸透の練習を行いました。方針に沿ってメンバーを動かすための短期志向アプローチではなく、悔しいという気持ち、こうしたいという想いを重視し、自分が感じていること、メンバーが感じていることを共有することからスタートしようという気づきも再確認しています。

このような取り組みがあった結果かどうかは分かりませんが、若手社員が主体的に企画し、早朝の勉強会がスタートしたり、以前に増して部門間の交流が増えたりと、本当に少しずつ、一歩ずつですが、我が社にも変化の芽が見えてきています。

『人は本当に変われるのか』
この問いからスタートした我が社の取り組み。残念ながら、まだ明確な結論を論じられるほどの成果は出ているとは言えませんが、『人も組織も、必ず変われる』と我々は確信しています。

人間が人間になったのは、『不完全の認知』があったからだという説があります。完全なるもの(自然などの人知を超えた存在<神ともいう>)を認知したことで、不完全なる自己への気づきがあり、そこから『人間』がスタートしたと言われています。

不完全さこそが人間であり、だからこそ完全なるものに向かって努力する。これこそが人間ということであれば、よりよい状態に向けて努力することは、人間の本質的な欲求であり、変化・成長することにこそ人間としての真の喜びがあるものと思われます。
一歩ずつ、一歩ずつ、我々も前進したいと考えています。