コラム

no.032
「人事と現場の距離」を縮めるためにできること
~親の心子知らず、人事の心現場知らず~

2016年09月28日 | 取締役 菅桂次郎

人事の方々にとって悩ましいことの一つに、「現場との距離感」がある。

多くの企業の人事担当者と話をしていると、会社の将来のことや、社員の幸せについて真剣に考えている方が多いことに気づく。当然と言えば当然なのだが、一昔前は「人事=事務職」というイメージで手続き的に業務に携わっている方も多かったような気がするが、ここ数年、人事の方の目つきが変わってきていると感じるのは私だけではないはずだ。

そんな皆さんと様々な問題意識について議論していると、経営と人事、経営と現場、人事と現場など、問題の多くが物事の「狭間」にあることを再認識する。

その中でも特に、「現場」と「人事」の間に存在する意識ギャップに頭を悩ませている人事担当者が多いのではないだろうか。

今回のコラムでは、「親の心子知らず」ならぬ「人事の心現場知らず」というテーマで、現場と人事の間にあるギャップを埋めるための人事の在り方について考えてみたい。

そもそも皆さんの組織では、どれくらい現場と人事が「会話」しているだろうか。ここでいう「会話」は、対面による直接的なコミュニケーションだけではなく、社内報やHPも含めた総合的な発信行為を指すものとしよう。

この一年、人事の思いを伝える場として会話をした社員の人数、時間、内容について少し思い出してほしい。

「・・・(汗)」となった方もいらっしゃるかもしれないが、冒頭に書いた通り、ここ数年の人事の方の問題意識や危機意識、もっと言えば自組織を思う強い気持ちに触れる反面、現場、特にマネジャークラスの方々との温度差を感じることが多いのも事実である。

次のリーダー候補人材の研修の場などでも、上司からしっかり動機づけられて研修に参加したという受講者は、全体の30%程度あれば良い方だろう。そのたびに、「もったいない」という感情が湧き出てくるのだ。

当然人事としては、研修の主旨など本人や上司に向けて事前案内を行い、相応の動機づけを行ってくれるだろうという期待を抱いていると思われるが、我々が想像している以上に、現場は人事の意図を汲んではくれない。

要するに、皆さんが自組織を思う気持ちも、人事施策に込めたメッセージも、経営の意思も「ほとんど伝わっていない」のが実情だ。

だからこそ人事は、愚直なまでの発信行為を行う必要があると思う。経営からのメッセージを映像化し、階層別研修の冒頭で必ず流し、そこに人事としての解釈(思い)を伝えている会社も存在する。

社内報を変える、対外的な発信で社員にもメッセージを送る、管理職向けのメルマガを配信する、直接現場に赴いて話を聞くなど、あの手この手を使って、とにかくしつこく喰らいつき、 人事の意思を伝えようと活動している組織ほど、現場のマネジャーと人事の距離が非常に近いのだ。

最初はきっと、現場から煩わしがられ、嫌がられる行為なのかもしれない。

私も子供の頃、両親から自分の将来のことをとやかく言われ、煩わしい気持ちになった記憶があるが、今となっては親から受けた愛情に心から感謝している。きっと人事と現場の関係も、親と子の関係に近いのではないだろうか。

そう考えると、人事の使命は「現場から嫌われても、会社や社員一人ひとりの成長を信じて、10年先、20年先を見据えた熱いメッセージを送り続けること」という捉え方ができる。

研修がピークを迎えるこれからの季節、また来期施策を検討し始める季節。改めて現場に、人事の皆さんの思いと熱量を伝播させてほしい。皆さんが発するメッセージが、10年後の未来に繋がることを信じて。