コラム

no.034
「働き方改革」を教育的観点から考えてみる

2016年11月30日 | 取締役 菅桂次郎

ここ数年の企業の最重要課題の一つに「働き方改革」がある。
この言葉の中には様々な論点があり、何か一つの施策を打ったからといって解決するものでもなく、むしろAという問題を解決すれば、Bという新たな問題が発生するなど、一筋縄ではいかないものという認識を持っている。

経営・人事・現場マネジャー・従業員など、それぞれの立場によって捉え方が変わるものでもあり、「総論賛成、各論反対(実は困る)」というのが現実だと思われるが、仕事観や会社観といった従来の価値観に改めて向き合うタイミングを迎えている。

また、「働き方改革」には新たな人事施策がセットになっていることが多く、我が社も各社から様々な相談をお受けすることが増えているのだが、安易に「研修プログラムを売る」のではなく、各社の状況に合った的確な取り組みを、お客様と共に模索していくプロセスこそが重要であると感じている。

気がつけば今年も残すところあと1カ月。来期の育成体系や施策を検討する最終段階であるこの時期だからこそ、今回のコラムでは、「働き方改革」について教育という観点から考えてみたい。

そもそも「働き方改革」が社会的テーマとなった背景には、「企業の永続的な発展に向けた労働力の質量両面の安定的な確保」がある。グローバル化や超高齢社会、技術革新など、不透明な環境に直面している状況において、「人材こそ差別化の最重要資源である」という思想だ。

同時に、雇用される社員の立場から見れば、ライフステージに応じた様々な選択を行いつつ、「自分らしく生きること」が適えられるということだ。ただしそのためには、「個人の自立」がより強く求められるとも解釈できる。

非正規雇用の処遇改善や長時間労働の是正、女性・若者が活躍しやすい環境、高齢者の就業促進、テレワークや副業などの柔軟な働き方の選択肢など、解決すべきテーマは挙げればきりがないが、これらに対する取り組みの成果は、企業側の「優秀な人材の確保」と社員側の「主体的なキャリア選択」という二つの側面を満たすものでなければ、どうしても歪みが生じてしまうはずだ。

だからこそ、この二つを繋ぐキーワードが必要になると思われ、そのキーワードこそが、「成長」ではないだろうかと私は考えている。

ややもすると、働き方改革の目標が、長時間労働の是正に集中しがちだが、働き方改革の大前提は、企業も個人も「成長し続けること」が重要であり、相互の依存関係ではない新たな関係性の構築が必須となっている。

少なくとも私の個人的な価値観では、「早く帰宅できるが成長できない環境」に留まりたいとは考えない。勿論、論外な職場環境は別として、例え大変であったとしても「今の楽」より「将来の成長」が見込める環境に身を置くことを選択するだろう。

学生時代の部活動でも、「もっとうまくなりたい」「勝ちたい」という一心で自主練に励んだように、ビジネスの世界でも「もっと良いものを!」というモチベーションが、個人の、そして企業の成長の原動力になると確信している。

また、リーダーシップ開発においても、修羅場体験が重要であるという各種調査結果があるように、障害を取り除くことが、必ずしも社員のためになりえないということだ。人の成長は「y=x」のような直線的なものではなく、紆余曲折し、時には寄り道をしながら到達していくものだと私は思う。

「働き方改革」においては、「人の成長」という観点を忘れることなく、短期成果の見えづらい「教育」がもたらす可能性を人事は信じてほしい。

『教育とは、世界を変えるために用いることができる最も強力な武器である(ネルソン・マンデラ)』