コラム

no.045
「現場から見れば、同じ人事部門」~見落としがちでシンプルな罠~

2017年10月26日 | 取締役 吉田卓

弊社では人事・人材開発部門の責任者様や担当者様をお招きして、リーダー育成や教育体系に関する無料セミナーを定期開催している。おかげさまで反響も大きく、これまでの3年間で延べ1,000社1,200名の方々にご参加いただいた。私自身もディスカッションのファシリテーター役として多くの方とお話しする機会に恵まれ、非常に有意義な時間を過ごさせていただいている。

当セミナーでは、各企業が抱えるリーダー育成や教育体系に関する課題をグループ内で共有する恒例のセッションがある。

  • 「現場上司が研修前に研修受講者を動機づけしてくれていない」
  • 「研修受講者の参加意欲や目的意識が薄い」
  • 「研修実施後の職場実践に向けて、現場上司がフォローしていない」

・・・など、ありとあらゆる角度から、““現場レベルで効果的に教育施策が展開されない”という問題意識や悩みが次々と打ち明けられる。

しかし、回を重ねるごとに私の中で、ある問題意識が生まれた。
現場で展開されない事実よりも「人事部門内部に存在する重要な課題」に焦点を当てるべきではないか?と。それは、言い換えると、「人事制度と教育制度の間に、なぜ“つながり”がないのか?」という問題提起とも言えるだろう。

「現場や社員に課題があるのではなく、人事部門内に課題がある」
全社の人材開発に関わる者としては、ここを起点に議論を始めなければ、生産的で建設的な答えには近づけない。効果的に人材施策を展開しようと色々と試みたにもかかわらず、社員には何も伝わっていないという経験をお持ちの方も少なくないのではないだろうか。

人事施策を効果的に運用し、業績向上と人材育成に努めておられることで有名な某社の社長様は人事部門に対して明言していることがある。

「人事部門がやるべき最大唯一のことは、社員を“しらけ”させないことである」

個人的には、人事部門を取り巻く課題意識の“本質”を突いた一言だと感じると同時に、「しらけ」の構造を人事部門自らがつくり出してしまっている実態に気づかされるメッセージであると感じた。

たとえば、「等級制度で掲げられている各階層の期待役割や期待成果は何なのか?」「評価制度の中で重要視している行動(コンピテンシー)は何なのか?」「昇格基準で設定されている能力要件は何なのか?」そして、「教育制度でフォーカスしている育成領域は何なのか?」・・・

これら、それぞれに整合性や関連づけ、意味づけがないかぎり、社員にとっては「しらけ」を生み出すメッセージとしか受け止められず、人事部門の苦労は水の泡となる・・・というのも一つの事実であろう。

冒頭にあった「現場で教育制度が浸透しない、現場で研修が活かされない」という問題意識は、「人事制度と人材開発体系が連携していない」という人事部門“内部”の問題意識に置き換えて、見直しを図っていく必要がある。

結局のところ、現場の社員から見れば、等級制度も評価制度も昇格制度も教育制度も・・・全て人事部門としての機能そのものであり、そこには「人事制度担当」であるとか「教育担当」であるとかの境界はない。

「人事部門内での協働・連携・対話」なくして、教育制度の浸透や人材開発施策の定着は実現しえないことを確信しつつ、現場の組織開発だけでなく、「人事部門の組織開発」にも貢献していきたいと強く思う今日この頃である。