コラム

no.051
「リーダーの選抜」に最終責任を負っているのは誰なのか?~選ぶ責任、選ばれる責任~

2018年4月24日 | 取締役 吉田卓

日本企業の人事部門が最も重要視しているにもかかわらず、成果が最も不十分だと認識されているテーマの一つに「次世代経営人材の選抜と育成」が挙げられるであろう。弊社でもこのテーマに関するソリューションを多くの企業で提供してきた自負がある一方、各社の取り組み内容には「強烈な葛藤」を感じずにはいられないのが本音である。

経済産業省が2017年に発表した「経営人材育成に関する調査報告書」の中で、私の「強烈な葛藤」の源泉とも言える調査結果が目に留まった。「実施している次世代リーダー候補者の選抜可否における判断基準」に関するアンケート調査で、「上司・部門長の推薦」の72.5%に続き、「過去の業務実績」が66.7%、「過去の査定結果」が58.8%となっており、その他を大きく引き離す結果となっていた。

これら調査結果から言えることは大きく2点あり、まず1点目として「社内基準」のみで選抜しているケースが圧倒的に多いということ。そして、それゆえに「過去基準」がベースになっていることが2点目として挙げられる。この現状を皆さんはどう考えるであろうか?

これまで多くの日本企業は、過去の成果が将来にも通用するビジネスモデルにくわえ、終身雇用や年功序列を軸とした人事制度のもと、社内基準による選抜が一定の機能を果たしていた。しかし、不確実で不透明な経営環境、グローバリズムやダイバーシティ経営が問われる昨今においては、もはや限界を迎えようとしている。

決して、過去から現在に至る成果を根拠に、将来価値や再現性を評価する選抜方法が全否定されるわけではない。ただし、海外進出を拡張し、ローカルリーダーを積極的に登用していく、異業種から優秀人材を招聘し育成していくなど、同質ではない多様な人材を前提とした人材マネジメントを進めていく中で、将来の経営人材を選ぶ基準が「社内価値」「過去価値」に終始してよいと考えること自体が不自然である。

さらに、日本企業に多い「選抜の最適化を阻む固有の風土」として、「強烈な横並び主義」「社内エースの護送船団方式」「失敗回避による過保護」の3点が挙げられる。同期意識や年次意識が高い社員群の中では、選ばれなかった人材へのモチベーション低下を過度に懸念する傾向が強い。また、社内エースに対しては「エリートにキャリア上の傷はつけられない」と失敗させられないメンタリティが依然として根強く残っている組織も多い。

くわえて、「抜擢をして実際に失敗したら、キャリアは終わり」というチャレンジングな選抜はできる限り回避することが得策であるとの風土が、「選抜の最適化」を大きく阻害している実態も見過ごせない。

では、「社外価値」「将来価値」の高い人材をいかに選抜していくべきなのか?

外部のアセスメント会社に依頼して、客観性の高い評価手法を選抜プロセスに取り入れることは一考であろう。ただし、これは一つの手法に過ぎず、決して十分ではない。「当社において経営人材とは何か」の明確な人材定義を現経営陣と人事部門が合意形成したうえで、その人材定義に見合う選抜プロセスや選抜手法を有機的に組み合わせていくことは避けて通れない重要なポイントであろう。

そして、その経営陣と人事部門が「圧倒的な当事者意識」をもってプロセスを設計し、最適な選抜に向けて「覚悟とコミットメント」を一つ一つの判断軸に滲ませていくことが、選抜の成否を大きく分けると言っても過言ではない。

多くの企業において、選抜プロセスを客観的な立場でご支援していると、「社内の誰もがリーダーの選抜と育成にコミットメントできていない」というケースに出くわすことが少なくない。たとえば、人事部門は「最後に決めるのは経営層だから」と言って、保有している評価結果などの表層的なデータを経営陣へ提示し、一方、経営層は「人事部門が収集したデータなのだから」と安易にそれらの材料をもとに決断する。

そして、時に現場の所属長でさえも、部下であるリーダー候補者が「昇進させてやるチャンスだ」と言って、「真実ではない推薦内容」を作り上げ、ノミネートさせる。結果、「誰にも危害を加えない有能な実務者」=「経営人材としては不適格者」が経営人材へ選抜されていく。

この「選抜に至る評価」とは、一体誰のために存在するものなのか?
誰がこの「評価結果」にコミットメントし、責任を負っているのだろうか?
そもそも、当の候補者本人は、経営人材としての「責任を果たすだけの責任」を持っているのだろうか?

冒頭に述べた「社内基準」「過去基準」への偏重という葛藤は、我々のソリューションやサービスで解消することが可能である。しかし、各社が抱えている問題はもっと根深い。我々は「選ぶ責任、選ばれる責任」について、各社とさらに協議を重ねていくことから始めなければならないのかもしれない。我々が担うべき「責任」も大きい。

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